11.5 数学の勉強法:標準から応用へ
更新日 2021年6月13日
数学が苦手と思う人は、公式を丸暗記していませんか?
苦手克服に有効なのは「公式の丸暗記」でなく「公式を自分で作れるようにすること」です。
アンケートでも、東大/京大合格者の74%が「公式の作り方」を覚えるを意識しており、そして難関大に合格者ほどこれを実践しています。
公式を丸暗記して、公式をあてはめて問題を解く訓練ばかりをする人もいますが、実はそれが数学が苦手になる原因です。
目の前の問題を解くことを優先するあまり、自分が使う公式という道具をちゃんと理解せずに使っていると、どこかで公式を使いこなすことができなくなります。
どういうことかというと、そもそも公式は、何度も出てくる計算を『型』にしただけです。
何度も出てくる処理だから公式になっただけで、あくまで問題を解くための処理(計算)の一つです。
何度も出てくる処理ということは、とても大事なわけですが、その処理の中身を理解せずに丸暗記してしまうことで、自分が何をやっているか分からなくなります。
「よくわからないけど、なんかこの公式が使えそうだから、公式にあてはめてみよっかな ⇒ やっぱり不正解だった~」という経験がある人はまさしくそれです。
少しひねった応用問題が出ると、公式の中身の処理を理解していないと、対応できなくなってしまうのです。
例を挙げます。
和の公式を暗記していたら、1+2+3+4+5・・・+100を求めるには、和の公式に n=100をあてはめて5050が出ます。
では、奇数だけを足す、1+3+5+・・・+99はどうでしょうか?
1/2・n(n+1)が当てはめられないので、公式を丸暗記していた人は困ってしまいます。
ですが、和の公式1/2・n(n+1)を以下のように、公式の作り方として覚えている場合はどうでしょう。
「元々のかたまりをひっくり返して足す」という考え方は1+3+5+・・・+99でも同じなので、以下のように解けます。
(もちろんn=2k-1としても解けます)
実際、私は和の公式1/2・n(n+1)を覚えてはおらず、代わりに「元のかたまりをひっくり返して足す」と覚えていました。
「公式を自分で作れるようになる」と色んないいことがあります。
- 何をやっているか理解できるようになる
- 公式を忘れても自力で思い出せる
- 応用問題に強くなる
過去には東大で、三角関数の定義と、加法定理の公式の求め方が問題として出されたこともあります。
これは東大からの「公式の丸暗記ではなく、公式の求め方をしっかり学べ」というメッセージだと思います。
公式の作り方を学ぶには教科書を使います。教科書には必ず公式の作り方が書いてあります。
教科書に出てくる公式の作り方を何度も読んで、書いて、自分の手で公式が作れるようにすることをおススメします。
教科書以外ですと以下サイトもオススメです
- 高校数学 数1の公式一覧とその証明まとめ
- KIT数学ナビゲーション
証明問題の問題集だと思って、解いてみるといいと思います。
高校3年生なら一気に総復習して、高校1,2年生なら学んだ単元から順番に確認していきます。
数学の応用問題の勉強法を紹介する前に、関関同立/上智MARCH/早慶/旧帝一工(除東大京大)/東大京大の文系学部の合格者が使用した数学応用問題集を紹介します。
難関大に合格した人がどんな問題集を使っていたのか、参考になると思います。
また主要な問題集について、関関同立/上智MARCH/早慶/旧帝一工(除東大京大)/東大京大ごとの合格者の使用率をまとめました。
続いて、関関同立/上智MARCH/早慶/旧帝一工(除東大京大)/東大京大の理系学部の合格者が使用した数学応用問題集をまとめました。
また主要な問題集について、関関同立/上智MARCH/早慶/旧帝一工(除東大京大)/東大京大ごとの合格者の使用率をまとめました。
最後に応用問題集で数学の典型問題の解法を身につけます。
<数学応用問題集>
- チャート式 基礎からの数学I+A(数研)
- チャート式 基礎からの数学Ⅱ+B(数研)
- チャート式 基礎からの数学Ⅲ(数研)
- Focus Gold 数学I+A(啓林館)
- Focus Gold 数学Ⅱ+B(啓林館)
- Focus Gold数学Ⅲ(啓林館)
- 1対1対応の演習/数学Ⅰ(東京出版)
- 1対1対応の演習/数学A(東京出版)
- 1対1対応の演習/数学II(東京出版)
- 1対1対応の演習/数学B(東京出版)
- 1対1対応の演習/数学Ⅲ 微積分編(東京出版)
- 1対1対応の演習/数学Ⅲ 曲線・複素数編(東京出版)
『1対1シリーズ』は、重要な問題に絞られている点、解法の着眼点がまとめられている点、解答の書き方が実践的である点、で優れており、難関大理系を受験する人にはオススメです。
ただし典型問題の網羅性という点では『青チャート』『Focus Gold』に少し劣ります。
時間に余裕がある人は、『青チャート』『Focus Gold』のどちらかをベースに、プラスとして『1対1対応シリーズ』をこなすのがオススメです。
受験までに残された時間によりますが、『青チャート』か『Focus Gold』の全ての例題について、見た瞬間に解法が浮かぶ状態になるのが理想です。
典型問題の解法は、総合問題を解くときに大事なパーツになります。
このパーツ(解法)がある、ということを前提として覚えていないと、総合問題の解法の組み立てはできません。
しつこく3巡繰り返して解法をマスターします。
⇒<8.1 最重要の勉強法!同じ問題集を繰り返す>
<数学応用問題集 1巡目>
1分考えても分からなければ、解説をなぞりながら書き写します。
繰り返しますが、高校の数学でひらめきが必要な問題はほとんどありません。
一部の超天才以外は、知らない解法はどれだけ考えても生み出せませんから、1巡目は解法の暗記という意識でも構いません。
1巡目は間違えても全く問題ありません。
ただし答え合わせをするときに「この問題のポイントはXX」と自分の言葉にして解説に書き込みます。
解説を読むと理解した気になりますが、自分の言葉でまとめ直すことで初めて理解したと言えて、類題にも対応できるようになります。
(難しい言い方をすると、理解を「具体」から「抽象化/一般化」することで、体系的な記憶につながり類題に対応できるようになります)
<数学応用問題集 2巡目、3巡目>
2巡目は1巡目で間違えた問題だけ、3巡目は2巡目で間違えた問題だけをやります。
試験問題だと思って、1巡目よりも粘って取り組みます。
共通テストや二次試験で数学を使う文系の人は、ここまでの演習で充分なことが多いです。
ここで共通テストや志望校過去問の演習に入り、苦手なところがあったら『青チャート』や『Focus Gold』に戻って復習します。
志望大学の二次試験の数学が難しい人は、総合問題集の演習に入ります。
総合問題集で解法の組み立てに慣れます。
総合問題でやっかいなのは「どの解法を使えばいいか」を自分で考える必要があることです。
典型問題であれば、二次方程式の章の問題は、二次方程式を使って解けばいいですよね?
ですが総合問題になると「二次方程式を使うのか微分を使うのか」から判断しなければなりません。
これは典型問題の解法がパーツとしてして完全に身についていないとできません。
まず志望校の過去問を見て、どの程度のレベルが必要かを確認し、そのレベルに合った問題集を選びます。
大学によっては応用問題集だけで充分な場合もあれば、総合問題集の演習が必要になることもあります。
<数学総合問題集 IAIIB>
- 文系数学の良問プラチカ 数学IAIIB(河合)
- スタンダード数学演習I・II・A・B受験編(数研)
- 理系数学の良問プラチカ 数学IAIIB(河合)
- 難関大の過去問
<数学総合問題集 Ⅲを含む>
- 理系数学の良問プラチカ 数学III(河合)
- オリジナル・スタンダード数学演習III受験編(数研)
- 難関大の過去問
総合問題集も間違えた問題に限り3巡繰り返して解法をマスターします。
⇒<8.1 最重要の勉強法!同じ問題集を繰り返す>
単に答え合わせをするだけでなく、自分になかった『解法の組み立て方』をためていくような意識で演習をしていくことを強くオススメします。
総合問題集を何冊もやる必要はありません。
難関大に合格した人も、平均で1冊しかやっていません。
ここまでの演習を終えたら、志望校の過去問演習に入ります。
過去問演習をする中で、抜けている典型問題の解法があれば『青チャート』『Focus Gold』の例題に戻って、復習します。
YouTubeや勉強本で「数学は暗記である」「数学は暗記でない」と議論されていることがあります。
結論からいうと「数学は暗記」は半分本当で半分嘘です。
典型問題の解法は暗記が必須ですが、総合問題では解法をひねったり、組み合わせたりして解く訓練が必須です。
『着眼点』という意味では暗記に近いものだという意見もありますが、解法をどう組み合わせるかを考えるのはやはり暗記より思考の要素が強いと思います。
アンケートで東大合格者に「数学は暗記に賛成か」と聞くと、意見が割れます。
結局、暗記も思考力も大事であり「数学は暗記だけで大丈夫」みたいな安易な答えではありません。
とはいえ、苦手意識が強い人は、まず解法を丸写ししながら暗記する、という意識ではじめるのはありです。
ただし苦手意識がなくなってきたら、初見で難問の解法組み立てにチャレンジする訓練は絶対に必要です。
本コラムのまとめ
- 公式の作り方を覚えると、少しひねった応用問題に対応できるようになる。
- 応用問題集を繰り返し、典型問題は一瞬で解法が浮かぶようにするのが理想。
- 総合問題集で、解法の組み立てに慣れ、解法の着眼点をためていく。